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インターネット上の誹謗中傷と戦う

2023年8月25日

弁護士 﨑久保宗則

前回に引き続きネット関係のお話

今回は、ネット上のいわゆる誹謗中傷というものに焦点を当てたいと思います。

皆さん意外とざっくりとしか理解していないんじゃないかと思いますし、いざ誹謗中傷された、もしくは(まずいことに)誹謗中傷してしまった場合にどのような対応をすればよいか分からないのではないでしょうか。

簡単ではありますが、このコラムを読んで、どのような対応ができるか分かってもらえればよいなと思います。

ネット上の誹謗中傷の特徴

目の前で他人から悪口を言われるのとは違って、ネット上では基本的に匿名で書き込みや投稿ができるため、相手の名前や住所が分かりません。

そのため、誹謗中傷された側は動きにくく、逆に誹謗中傷する側はばれないだろうと気軽に書き込み等をしてしまうのです。

そもそも誹謗中傷って?

誹謗中傷は法律上の用語ではなく、辞書などで書いているとおり漠然と人の悪口を言うことや名誉を傷つけることをいうものと考えられます。

ただ、法律家としては「要件→効果」という見方をすれば少し整理できると思っています。

 

例えば、

「オマエ、馬鹿」という悪口は、感覚的に誹謗中傷に当たると思いますよね。これは、「公然と人を侮辱した」として刑法231条の侮辱罪に該当する恐れがあります。

また、

「○○は、毎晩女遊びをしている」という悪口はどうでしょうか。これは、「公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した」として刑法230条の名誉毀損罪に該当する恐れがあります。

他には、

「○○の本名は~/○○の住所は~」といういわゆるプライバシー侵害はどうでしょうか。プライバシー侵害については刑罰の規定はありませんが、民事上の不法行為に該当する恐れがあります。なお、プライバシー侵害については誹謗中傷とは別だという考えもあると思います。

このように、誹謗中傷といっても、着地点(効果)が刑罰か民事上の不法行為かいくつかのパターンがあります。このあたりは弁護士が好んで判断することですので、お気軽に聞いてください。

インターネット上で誹謗中傷されたらどうする?

誹謗中傷の内容や程度によりますが、被害者(誹謗中傷された側を「被害者」、した側を「加害者」といいます。)が自分で加害者をブロックしたり書き込み等の削除依頼をかけたりして対処することや、加害者に対して責任追及するために弁護士に依頼することが考えられます。ここでは、弁護士に依頼する場合、どのようなことになるのか説明していきます。

誹謗中傷を受けた場合、被害者は精神的損害を受けているわけですから、基本的には加害者に損害賠償請求をすべきだと思います。ですが、先ほど述べたとおりネット上では基本加害者の氏名と住所が分からないので、まずはそれを特定する裁判を行います。

(これが複雑なんです。具体的には、コンテンツプロバイダと呼ばれるSNS事業者等に対して発信者情報開示仮処分という申立てを行いIPアドレスを入手します〔裁判①〕。そして、そのIPアドレスから経由プロバイダを特定し、その経由プロバイダに対して発信者開示請求訴訟を提起して氏名と住所を特定します〔裁判②〕。仮処分と訴訟と違う手続きの名前が出てきますが、裁判が2回あるということさえ分かってもらえればよいです。)

そうして次に、特定した人物に対して損害賠償を求める民事訴訟を提起するという流れになります。

時間がかかりそうと思ったそこのあなた、大正解です。

ですが、開示手続きが複雑で利用しにくいということから、令和3年4月28日からプロバイダ責任制限法が改正され、新たな手続きが導入されることになったので(これまでの手続きも利用できます。)、以前よりは時間が短縮されることになりました。

発信者情報開示は簡単になった?

上記で述べたとおり、従来は氏名と住所を特定するために裁判が2回必要でしたが、プロバイダ責任制限法改正後は、「開示命令」という一つの裁判手続で裁判2回分のことができるようになりました。

実際に特定までの流れは変わらないので画期的で大幅短縮な手続きというわけではありませんが、裁判が一度で済むことで利用しやすく簡単になったものといえます。

ただこれでもまだまだ時間がかかってしますので、さらなる改正を期待したいですね。

加害者側

けっして匿名で逃げ切れるものではないので、他人を傷つけるかもしれないと思ったら一度手を止めて考えるようにしてくださいね。

上記で述べたとおり、従来は氏名と住所を特定するために裁判が2回必要でしたが、プロバイダ責任制限法改正後は、「開示命令」という一つの裁判手続で裁判2回分のことができるようになりました。

まとめ

これを読んで、大変じゃないか!と思いましたか?

ですが、人はどんなに強くても傷つけられることを容認し続けることはできません。ちょっとでも気になったら一度相談したらよいのです。私はそう思います。

誹謗中傷に関する問題は、ストレスや面倒ごととひっくるめて我々事務所所属弁護士が引き受けますよ。直近では、出版した本に名誉を毀損するようなレビューを付けられた案件で、発信者開示請求を行い、加害者に対し責任追及を行いました。経験ある弁護士がおりますので、安心してご相談ください。

ではまた次回お会いしましょう~