コンテンツへスキップ

動画配信者と視聴者との関係 ~殺人事件に発展した事例~

2023年5月22日

弁護士 﨑久保宗則

はじめに

昨今、TVやCM等で動画配信サイトの広告が流れているのを目にすることが多くなりました。

 

YouTubeTwitch、その他様々なプラットフォームで配信できる時代になり、ゲームや雑談、特技披露や時事問題の解説など幅広く活用がされています(私の趣味がゲームなもので、ゲーム関連に偏っていることをお許しください・・・)

皆様も、動画やライブ配信を視聴したことがあると思います。その裏で、様々な法的トラブルが生じていることはご存じでしょうか。もしかすると、あなたも渦中にいるかもしれません。また、まさにその配信を行っている配信者の方は、身をもって感じているところかもしれません。よろしければ、少し覗いていってください。

今回は、動画配信者と視聴者との関係から生じるトラブルについてです。最新の刑事事件の裁判例がありましたので、ご紹介させていただきます。

裁判例の紹介

さいたま地方裁判所判決令和5年5月16日

本件は、元交際相手の女性をアパートで殺害したとして殺人等の罪に問われた事案です。

 

被害者は、動画配信アプリ「17LIVE」の中で活動している配信者(ライブ配信を主な活動をしていたようで、「ライバー」と呼ばれています。)であり、被告は視聴者(ライバーとの対比で「リスナー」と呼ばれています。)でした。被告と被害者は配信上で知り合い、交際するに至ったのですが、被害者に別れを切り出されたことをきっかけに殺意を抱き、被害者宅で待ち伏せし、包丁で7回突き刺し、首を絞めて殺害したという内容でした。被告は犯行動機について、裁判で「他の男のものになるなら殺してしまおうと思った」と供述したとのことで、非常に身勝手な犯行であるといえます。

 

検察官は懲役18年を求刑し、令和5年5月16日に懲役17年の判決が出ました。

動画配信アプリなどで配信するライバーは、基本的に本名や住所などの個人情報を公表していないため、基本的にはこのような人的なトラブルに発展することはないでしょう。

 

しかし、本件のように進んで交際を始めた場合には、その交際相手には自己の個人情報を知られることになります。本件はまさに最悪のケースと言えますが、そうでなくとも氏名や住所をさらされるリスクがあったりと何かと大きなリスクが伴うことは間違いありません。安易にライバーとリスナーの関係を崩すのは避けたほうがよいでしょう。

ライバーの活動は、ネットを通じて不特定多数のリスナーに向けてエンターテイメントを提供する仕事です。ライバーが好きであるという気持ちはもちろん大切にしていただきたいですが、自己と相手の関係性をしっかりと自覚し、ライバーを傷つけるような行為は絶対にしないでくださいね。

さて、今回は動画配信者と視聴者との関係~殺人事件に発展した事例~を紹介いたしましたが、次回は、最近増加中の誹謗中傷事例について紹介したいと思います。

また次回お会いしましょう。